関東の某国立大を、卒業した栄悟が、結婚相談所に登録したのは、31歳のときである。
理由は、翌年の、アメリカ留学が決まっていたからだ。
勤務先の京都大学には、理系だし、女性が勿論少ない。しかも、教員だし、合コンもない。
2年留学する前に結婚しておきたかった。
同級生は、急に結婚したものも多かった。
帰国してからだと、34歳になってしまう。
いくらなんでも、遅すぎると思った。
栄悟の出身は、愛知県。大学は、関東で、関西に勤務して、数年がたっていた。
栄悟は、2~3年前から、頭髪が、一気に後退して、歳よりはだいぶ老けてみえた。
彼女のいないのは、そのせいもあると思っていた。
それも、相談所に登録した理由の1つでもある。
誕生日1月前の、4月に登録し、これといった出会いもないまま、(というより、断わられ続けて)瑞樹にであったのは、11月だった。
瑞樹も、小学校教諭をしていて、大柄、どちらかというと太っていて、眼鏡をかけていて、25歳には、見えなかった。
でも、眼鏡を取った顔は、幼く、考えかたも素直でかわいかった。
遊園地や、京都を、案内してデートしたのも、彼女は、子供のように、無邪気でかわいかった。
「可愛いし素直だし、2人でいると本当に楽しい。」
4月には、渡米が決まっていることもあって、1月にプロポーズしたときは、正直、受けてもらえる自信は、全然なかった。
「やっとなれた、職場で一生働くつもりでいる彼女が付いてきてくれるだろうか?
急いで、返事しなくてもいいけど、もう、いろんな準備をしないといけないので、答えを聞かせてほしい。できれば、結婚してニューヨークについてきてほしい」といった。
瑞樹は、「相談所の担当者に相談してみる。」といった。
3日ほどして、電話がかかってきた。
彼女のこたえは、「イェス」だった。「なんて相談したの?」
「プロポーズされて、ニューヨークについてきてほしいといわれた。」と彼女が、担当員にいったら、
『で、瑞樹ちゃんは、彼のことどう思ってるの?』と担当者。
瑞樹は、「この人を逃したら、もう、結婚はないと思う」と答えたらしい。
『相談の必要ないやん』といわれたらしい。
担当者のアドバイス通りに親に話たら、意外なことに(母親には、早いと反対されるのじゃないかと心配していた。)大喜びされたらしい。
両家の親に挨拶にいき、両家の意外な共通点に不思議な縁を感じた。
とんとん拍子に話はきまり、自分だけ4月に渡米し、6月に帰国して、郷里の熱田神宮で挙式し、瑞樹は、運転免許をとって8月に渡米し、9月から、ニューヨークで、学校に通うとともにニューヨークで新婚生活は、スタートした。
学期末の時点で、瑞樹は小学校を退職しやめるつもりは、なかったようだが、英語を勉強し帰国後、再就職することにした。
瑞樹は出会う9月に相談所に登録する時に、「仕事は続けたいし、語学留学したい。でも、つきあったことないので、登録するが、であって、2年待ってくれる人探せますか?」と担当者に聞いたらしい。
担当者は『そんな人いません。でも、25でつきあったことないは、いいにしても、35でつきあったことないは、引かれるよ。今やったほうがいい』と勧められて、勢いで登録したそうだ。
結婚の報告にいったら、「結婚も、留学も大きな夢が2つかなったね。こんな奇跡は初めてよ。」とよろこばれたらしい。
瑞樹の背中を押してくれた担当者には、感謝してもしきれない。
恩返しは、2人がいつまでも仲良くしあわせになることだと思っている。